製造業がIoT機器を導入するメリットは?種類と選び方を解説

製造業の現場では今、IoT機器を使った設備管理や業務の効率化が急速に進んでいます。温度や振動を感知するセンサー、設備の状態をクラウドに送る通信機器など、現場で起きていることをリアルタイムに見える化する仕組みが注目されています。

とくに、突発的な故障を未然に防ぐ予知保全や、作業のムダをなくす生産性の向上を目指す企業にとって、IoTはもはや避けて通れない選択肢といえるでしょう。

本記事では、製造業で使われている代表的なIoT機器の種類や導入効果、選ぶときの注意点まで、現場目線でわかりやすく解説します。

なぜ製造業でIoT機器が注目されているの?

製造業では近年、IoT機器の導入が急速に進んでいます。背景にあるのは、設備の故障や作業のムダを減らし、生産性や品質を安定させたいというニーズです。DX推進や人手不足への対応としても、現場の見える化や自動化が求められるようになり、IoTの活用が注目されています。

業界全体で導入が進んでいる背景

製造業でIoT機器の導入が広がっている背景には、いくつかの社会的・経営的な課題があります。まず大きいのが人手不足です。現場では熟練作業者の高齢化が進み、ノウハウの継承や安定した運用が困難になりつつあります。IoT機器を導入すれば、これまで目視や経験に頼っていた設備点検や異常検知を自動化でき、人に依存しすぎない仕組みづくりが可能になります。

さらに、製造業では納期短縮や高品質の維持が以前にも増して求められています。顧客の要望に応えるには、設備や工程の状態を常に把握し、異常の兆候を早期に察知して素早く対応する必要があります。IoTセンサーを活用して温度や振動などのデータを取得・分析すれば、設備の状態をリアルタイムに見える化でき、故障や不具合を未然に防ぐことができます。

また、政府による中小企業のDX支援や補助金制度も後押しとなり、IoT導入のハードルは以前より下がっています。こうした環境の変化が、製造業におけるIoT機器の普及を加速させています。

製造現場のよくある困りごと

多くの製造現場では、日々の運用においてさまざまな課題に直面しています。その一つが、設備の突発的な故障です。異常に気づくのが遅れると、ラインが止まり、納期遅れや品質トラブルにつながります。予兆を見逃さないために定期点検を行っていても、作業負荷や人手不足の影響で対応が追いつかないケースもあります。

また、現場の状況を管理職や本社がリアルタイムで把握できないという悩みも多く見られます。報告は紙やエクセルに頼っている企業も多く、作業の進捗や不具合の情報がリアルタイムに共有されず、対応が後手になる傾向があります。

さらに、熟練作業者の退職や高齢化により、経験や勘に依存した運用が限界を迎えつつあります。新人や若手が増えても、標準化された作業手順や判断基準がなければ、ミスや品質のばらつきが起こりやすくなります。

こうした困りごとに対応するために、現場の見える化や予兆検知、遠隔監視が可能なIoT機器の導入が注目されているのです。

DXやスマート工場とのつながり

IoT機器の導入は、製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)やスマート工場の実現と密接に関わっています。DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスを見直し、効率化・最適化を進める取り組みです。スマート工場はその象徴的な形であり、IoTはその中核を担う技術の一つです。

例えば、IoTセンサーで収集した温度や振動、稼働状況などのデータをクラウドに蓄積・分析することで、製造プロセスの最適化や設備の異常検知が可能になります。これにより、属人的な判断に頼らず、データにもとづいた意思決定ができるようになります。

また、工場全体の状況を可視化し、複数拠点の管理を一元化できる点もスマート工場の大きな特徴です。IoTを活用すれば、現場から離れた場所にいても稼働状況をリアルタイムに確認でき、迅速な対応が可能になります。

このように、IoT機器の導入は単なる自動化にとどまらず、DXの推進やスマート工場の実現に向けた第一歩として、重要な役割を果たしています。

製造業でよく使われるIoT機器の種類

IoTを製造現場に取り入れる際には、さまざまな機器が活用されます。センサーで設備や環境の情報を集め、通信機器でクラウドに送信し、制御装置やデータ処理機器で活用するといった役割分担があり、それぞれの特性を理解しておくことが重要です。

温度や振動などを測るセンサー類

IoT機器の中でも最も基本となるのが、温度や振動、湿度、電流などを測定する各種センサーです。これらのセンサーは、設備や製造ラインの状態をリアルタイムに数値として捉える役割を持ちます。例えば、モーターやポンプに取り付けた振動センサーは、通常と異なる振動パターンを検出することで、ベアリングの摩耗や異常の早期発見につながります。

温度センサーは、装置の加熱や冷却の状態を把握するだけでなく、異常加熱による故障や火災のリスクを事前に察知するためにも活用されます。また、湿度センサーは食品・医薬品・電子機器といった湿度管理が重要な製品の製造環境に不可欠です。

センサーから得られるデータは、日常の運転管理だけでなく、異常の予兆検知や予防保全にも活用され、安定した生産体制を支える要素となっています。現在では、小型・無線・バッテリー駆動など、多様なタイプのセンサーが提供されており、既存設備に後付けしやすい点も導入しやすさを後押ししています。

ネットにつなぐための通信機器

センサーから取得したデータを有効活用するには、それを確実に送信できる通信環境が欠かせません。そこで重要になるのが、ゲートウェイやIoTルーターなどの通信機器です。これらは、センサーなどから集めた情報をインターネットやローカルネットワークを通じてクラウドに送信する役割を担います。

通信方式には、Wi-Fiや有線LANのほか、工場内での接続安定性を重視したEthernet接続や、長距離・省電力通信が可能なLPWA(LoRa、Sigfoxなど)、高速・大容量の5Gなど、用途や環境に応じた多様な選択肢があります。

工場では鉄筋構造や干渉源の多さから、通信の安定性が特に重視されるため、機器選定では通信距離やノイズ耐性も考慮する必要があります。また、複数のセンサーからの信号を一括で受け取る中継装置やコンバーターも併せて活用されるケースが一般的です。

これらの通信機器をうまく組み合わせることで、現場とクラウドを安全かつ安定してつなぎ、遠隔からの監視や分析、制御といったIoTの効果を最大限に引き出すことができます。

動作を制御するための装置や仕組み

センサーやデータ通信によって現場の情報が集まった後、それをもとに設備や工程を自動で制御するための装置が活躍します。代表的なものには、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)やモーター制御装置、リレー制御システムなどがあります。

たとえば、温度が設定値を超えたときに自動で冷却ファンを作動させたり、異常振動を検知してラインを一時停止させたりと、現場での即時対応に役立つ仕組みです。人手を介さずに反応できることで、トラブルの拡大防止や品質の安定につながります。

制御装置は、センサーと直接つながって信号を受け取るだけでなく、クラウドやエッジデバイスと連携して、より高度な判断や複雑な制御を行うケースも増えています。また、通信プロトコルの違いやレガシー機器との接続も考慮し、適切な制御機器の選定が求められます。

IoT化が進むにつれ、これらの制御装置はつながることが前提となってきており、ネットワーク対応型のPLCやエッジAI搭載型の装置なども登場し、柔軟な設備制御が可能になっています。

データを集めたり整理したりする機器

センサーから送られてくる膨大なデータを効率よく活用するには、それを一元的に集めて整理するための機器やシステムが欠かせません。代表的な機器としては、IoTゲートウェイ、データロガー、エッジコンピュータなどが挙げられます。

これらの機器は、現場に設置された複数のセンサーや装置からのデータを集約し、フォーマットを統一したり、必要な情報だけを抽出・整理してクラウドへ送信したりする役割を持っています。特に、リアルタイム性や通信負荷の面で、エッジ処理を活用するケースが増えており、クラウドへの負担軽減や即応性向上につながります。

また、機器の状態や履歴をログとして記録しておくことで、異常発生時の原因追跡や予知保全にも役立ちます。どのようなフォーマットで、どの周期で、どこに保存・送信するかといった設計も重要です。

最近では、クラウド連携を前提とした統合プラットフォームや、AI処理を行えるエッジデバイスも登場しており、単なる記録装置にとどまらず、現場改善や分析業務の中核を担う存在となっています。

IoT導入で期待できる効果

製造業にIoT機器を導入することで、設備の稼働状況や作業の流れが見える化され、現場の改善に役立ちます。故障やロスを減らしたり、作業効率を上げたりと、さまざまな効果が期待されます。ここでは、代表的な導入メリットを具体的に紹介します。

故障やトラブルを減らせる

生産ラインでは、一つの設備トラブルが全体の工程停止につながることもあり、稼働の安定性が重要です。IoTセンサーを用いて、モーターの振動や温度の微細な変化を常時モニタリングすれば、異常の兆候を早期に検出できます。

たとえば、加工機の軸受けに取り付けた振動センサーが「通常と異なる揺れ」を検知し、アラートを出すことで、設備が止まる前に保守対応が可能になります。これにより、突発停止や製品不良といった生産リスクを回避できます。

従来のように定期点検や人の勘に頼るのではなく、「状態に応じたメンテナンス」が実現できるのがIoTの強みです。計画外のダウンタイムを減らすことで、納期遅れや損失コストを抑え、現場の信頼性を高められます。

作業のムダを減らして効率アップ

製造業の現場には、人・モノ・設備の動きに多くの非効率が潜んでいます。IoTを活用してラインの稼働率や作業員の動線、在庫の流れなどをデータとして可視化すれば、ムダな動作や停滞時間を明確に把握できます。

たとえば、加工から検査・出荷までの工程で、どこに滞留や手待ちが多いかを分析すれば、段取り替えや人員配置の改善につながります。人の移動距離や設備の稼働ログをもとに、レイアウト変更の根拠も得られます。

また、紙の作業日報やチェックリストをIoTデバイスで自動収集・記録に切り替えれば、記入漏れの防止や作業時間の短縮が可能です。小さな効率化の積み重ねが、結果としてライン全体の生産性向上につながります。

設備の寿命をのばしてコストを抑える

製造現場では、加工機やコンプレッサー、搬送装置など高額な設備が多く、一度導入すれば長期間の運用を前提とします。だからこそ、設備の早期劣化を防ぎ、できるだけ長く安定して使い続けることがコスト削減につながります。

IoT機器を使えば、設備の稼働状況や消耗部品の状態をリアルタイムでモニタリングでき、摩耗や異常熱などの劣化のサインを早めに把握することが可能です。これにより、部品の交換タイミングを見極め、過度なメンテナンスや手遅れの修理を回避できます。

たとえば、ベルト駆動装置のモーター温度や回転数の変化を記録すれば、異常発熱や空回りなどの兆候を検知し、破損を未然に防げます。これまで壊れてから交換だった保全対応が、状態に応じた計画的な保全へと進化します。

設備の寿命を延ばせば、突発的な入れ替え費用やラインの停止による損失も抑えられます。IoTはコストの最適化と、設備投資の長期的な回収を支える重要なツールです。

見える化で現場改善につなげる

製造現場では、ベテラン作業員の勘や経験に頼った運用が多く、「なぜ遅れているのか」「どこでムダが出ているのか」が把握しづらいという課題があります。IoTによって工程や設備の状態を数値で可視化すれば、その不透明さを解消できます。

たとえば、成形機の稼働ログや作業者の動線、異常発生時刻などをクラウドに蓄積し、グラフやダッシュボードで表示することで、どこで滞留やトラブルが起きているかが一目でわかります。

また、複数拠点を持つ工場間で設備稼働率や生産実績を比較すれば、拠点ごとの差異が浮き彫りになり、全体の最適化にもつながります。単一現場の改善だけでなく、工場全体・グループ全体の効率アップに役立ちます。

製造業がIoT機器を選ぶときのポイント

製造業でIoTを導入する際は、「とりあえず導入してみる」ではうまくいきません。現場環境に合うか、通信は安定するか、精度は足りるかなど、設備の特性と照らして機器を選ぶ必要があります。あとからトラブルにならないためにも、選定時のポイントを押さえておきましょう。

精度や使える環境を確認する

製造現場で使うIoT機器は、計測や制御の精度が現場に合っているかどうかが非常に重要です。たとえば、ミクロン単位のズレが不良につながる精密加工では、高精度センサーが必須です。一方で、ある程度の幅で問題ない工程なら、そこまで高価な機器は不要です。必要以上の精度を求めると、コストばかりがかかるため注意が必要です。

使用環境に適した耐性も確認しましょう。工場内には高温・多湿・粉塵・油分といった過酷な環境があり、一般的な電子機器ではすぐに故障するおそれがあります。防水・防塵・耐熱・耐油など、使用場所に応じた仕様が求められます。

誤作動が許されない工程では、周囲のノイズによる誤検知や通信障害も防がなければなりません。精度だけでなく、環境との相性まで考えておくことが、長期運用の安定につながります。

通信の方法やネットワークの整え方

IoT機器が取得したデータは、リアルタイムで送信されてこそ価値があります。そのため、通信方式の選定とネットワークの構築も欠かせません。たとえば、工場内で安定した接続を求めるなら有線LANが一般的ですが、柔軟な設置や拡張性を考えるとWi-FiやLPWA(省電力広域通信)も有効です。

通信方式によって通信距離や電力消費、設置の自由度に差が出るため、現場のレイアウトや使用頻度に応じて適切な手段を選ぶことが必要です。また、既存ネットワークとの干渉やセキュリティリスクも見落とせません。

特に製造業では、複数の機器を一括で管理するケースが多く、ネットワークの帯域やルーターの処理能力も重要になります。安定した運用のためには、IoT導入前に通信インフラの見直しを行い、必要に応じて回線の強化やVLAN構築なども検討すべきです。

電源や設置後のメンテナンスのしやすさ

製造現場では、IoT機器を長期間安定して使い続けることが求められます。そのため、設置時の配線のしやすさや、電源の取り回しがスムーズかどうかは重要なポイントです。たとえば、電源確保が難しい場所に設置する場合は、バッテリー駆動やエネルギーハーベスティングに対応したセンサーを選ぶことで、工事コストや配線の手間を減らせます。

また、定期的なメンテナンスや交換作業が必要になる機器の場合、「アクセスしやすい位置に設置できるか」「取り外しやすい構造か」といった要素も見逃せません。配管や機械の裏側に設置してしまうと、点検時にラインを止めなければならないなど、現場への負荷が増してしまいます。

さらに、センサーの校正やファームウェア更新など、導入後の維持管理まで視野に入れて選定することが、安定運用の鍵となります。導入時だけでなく、数年後まで現場で無理なく扱えるかを想定したうえで、IoT機器を選ぶことが大切です。

後からの追加や変更に対応できるか

製造現場では、生産ラインの増設や設備の入れ替えなど、変化がつきものです。IoT機器を導入する際も、将来的な変更や拡張に柔軟に対応できるかどうかが、選定の大きなポイントになります。初期導入では一部ラインのみでも、効果が確認できれば全体展開を検討する企業も多く、スモールスタートからのスケーラビリティが重要です。

たとえば、同じネットワーク上で複数台のセンサーを増設できる設計や、接続デバイス数に制限の少ないゲートウェイ機器を選ぶことで、後からの追加導入がスムーズになります。プロトコルの互換性や拡張ポートの有無も確認ポイントです。

また、クラウド側の分析ツールやダッシュボードが拡張性を持っているかも見ておく必要があります。将来的にKPIを追加したり、他のシステムと連携したい場合に、柔軟に対応できる構成であれば、運用の幅が広がります。

導入時に気をつけたいこと

IoT機器の導入は、ただ取り付けるだけでは効果を発揮しません。導入前の確認や運用に向けた準備を怠ると、正しいデータが取れず、トラブルや期待外れにつながるおそれがあります。ここでは、導入時に見落とされがちな注意点を解説します。

正確なデータを集める工夫が必要

IoT導入の目的は、現場の状態を正確に把握し、分析や判断に活かすことです。ところが、センサーの設置位置や精度が不適切だったり、ノイズや温度変化の影響を受けたりすると、取得データの信頼性が損なわれます。製造業では特に「1℃の違い」「わずかな振動の変化」が品質に影響するため、データの精度は軽視できません。

たとえば、振動センサーを取り付ける際には、ボルトの緩みや取り付け角度によって測定値がズレる場合もあります。また、湿度や油分の多い環境では、センサーの誤動作を防ぐために防塵・防水仕様の確認が必要です。さらに、電源の安定供給や通信の遅延・遮断によるデータ欠損にも注意するべきです。

こうしたリスクを減らすには、導入前に現場環境をよく把握し、センサーごとの特性に合った設置や試験を行うことが欠かせません。正確なデータ取得があってこそ、IoTによる見える化や予知保全が意味を持ちます。

古い機械とうまくつながるか確認する

製造現場には、10年~20年単位で使われ続けている古い設備も多く存在します。これらはIoT導入時の大きな壁になることがあります。というのも、旧式の機械はネットワーク接続の前提がなく、センサーを取り付けるためのインターフェースがなかったり、機器の仕様が不明だったりするためです。

たとえば、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)との接続では、通信プロトコルが異なるとデータ連携ができず、ゲートウェイなどの中継装置が必要になるケースもあります。また、そもそも改造ができない設備や、メーカーがサポートしていない場合もあります。

このような場合には、「後付けできる外付けセンサー」「アナログ出力を変換してデジタル化する装置」などを活用して、既存設備とIoTを橋渡しする工夫が求められます。導入前に、機械の年式や仕様書を確認し、現場担当者と連携して事前の検証を行うことが重要です。新旧の設備が混在する現場ほど、慎重な設計が導入成功のポイントになります。

人材や体制も整えることが大切

IoT機器を導入しても、運用やデータ活用を担う人材が不在では、その効果を十分に発揮できません。とくに製造現場では、設備に詳しい現場スタッフと、ITに明るい情報システム担当の連携が欠かせません。ところが現実には「機械は得意だがデジタルは苦手」「IT担当が現場に入る機会が少ない」といった分断が生まれやすく、導入後のトラブルや運用停滞の原因になります。

IoT導入は単なる機器の設置ではなく、組織の運用体制そのものを見直す機会です。たとえば、データの確認・分析を誰が担当するのか、異常が発見された場合の対応フローはどうするかなど、事前に役割分担とルールを明確にしておく必要があります。また、属人化を防ぐためのマニュアル整備や、社内で知識を共有できる教育体制も重要です。

セキュリティ対策も忘れずに行う

製造業でIoT機器を導入する際、見落とされがちなのがセキュリティ対策です。センサーや通信機器をネットワークにつなぐことで、外部からの攻撃リスクが新たに生まれます。たとえば、無防備なネットワーク設定や初期パスワードのまま放置された機器が、侵入の足がかりとなることもあります。

とくに重要なのは、製造設備に直接かかわるIoT機器が狙われた場合、生産停止や品質不良といった深刻な影響につながる恐れがある点です。また、クラウドに送信されるデータが漏洩すれば、取引先との信頼関係にも影響します。

そのため、導入前にファイアウォールやVPN、アクセス制御などの仕組みを整え、IT部門とも連携してセキュリティ方針を統一しておくことが求められます。さらに、定期的なソフトウェアの更新や、脅威に対する社内教育も欠かせません。IoTは便利さの裏側にリスクもあることを意識し、導入と同時に守る体制を整えることが安全運用へ繋がります。

まとめ

製造業におけるIoT機器の活用は、設備の安定稼働や作業効率の向上、コスト削減など、さまざまな課題解決につながる重要な手段です。とくに、現場の状況をリアルタイムで把握できる「見える化」は、改善サイクルを回すうえで大きな武器になります。

とはいえ、導入には機器の選定や設置環境、人材体制、セキュリティなど検討すべきポイントも多く、慎重な計画が欠かせません。まずは身近な設備から少しずつ始め、試験導入を通じて効果を見極める姿勢が重要です。現場に寄り添った導入を進めることで、持続可能なスマート製造への一歩となるでしょう。

By 白井